海外産業博物館  NO.26


ドイツ博物館 Deutsches Museum

教師対象のカレッジも

−生徒引率前に多様な研修−


石田正治  by ISHIDA Shoji


カレッジ校長のクレッツ博士に聞く筆者

 ドイツ博物館は、資料の質・量ともに秀逸な博物館であるが、博物館としての教育活動がまた先駆的である。その中心となっているのがドイツ博物館の教育部門、ケルシェンシュタイナー・コレーク。コレーク(カレッジの意味)の名称は、数学者であり物理学者であったゲオルグ・ケルシェンシュタイナーに由来する。ケルシェンシュタイナーは、当時のドイツの教育改革運動の指導者であり、ドイツ博物館の創設者の一人でもあった。 ケルシェンシュタイナーは、ドイツ博物館の創設にあたり、博物館の理念と活動の基本について提唱している。彼は、博物館は単に資料を保存し研究する施設ではなく、同時に一般の人々に科学と技術の基本的な原理とその歴史的展開を可能な限りわかりやすく親しみやすく語りかける教育施設と位置付けた。展示は、「科学的、歴史的、芸術的、あるいは社会的な視点に関係なく、完全に教育的原理に基づいて編成されなければならない、すべては教育的視座に従わなければならない」としたのである。「教室で学ぶのは、言葉によるモノの輪郭であり、博物館では、モノ自身が仕事をするのである」とも彼は述べている。
 1976年、ケルシェンシュタイナーの業績を称えて命名されたケルシェンシュタイナー・コレークは、教師を対象にしたドイツ博物館の教育部門として開設された。コレークは、ドイツ博物館を利用する教師のための補修教育機関で、対象は、技術や歴史の現役の教員、教育学部の学生、企業の教育担当者などである。コレークでは、まず受講者自身が博物館を歩き回って見ることに始まり、付属図書館での原著、原典の調査、教授法の研究、そして資料の復元や教材づくりを研修する。
 次にそうした教師が生徒を引率して、博物館の展示資料をもとに授業を展開するのである。その教育的成果は計り知れない。
(中部産業遺産研究会事務局長、豊橋工業高校教諭・石田正治)


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